江戸時代から変わらぬ形
昔懐かしい「ほうき」の魅力が再認識できるのが『江戸ほうき展示館』です。開設しているのは中央区京橋、天保元年(1830年)創業の「白木屋傳兵衛(でんべえ)」。江戸時代後期からほうきをつくり続けてきた老舗です。
店内はほうき草の香に満たされていて、それだけで癒されてしまいます。展示されているのはショーケースに納められた3分の1の大きさのミニチュアほうき。忠実に再現されて編み込みの美しさは見事です。そして南部ほうきや鹿沼ほうきなど地方のほうきのコレクションも。ミニチュアは、職人が手本にできる設計図としての意味もあるといい、小ささ故に実物以上に手間がかけられた緻密さで、ほうきが優れた工芸品であることがうかがえます。
当たりがよくて力いらず
「座敷ほうきをつくる店は昔からありましたが、〈江戸ほうき〉と名付けてつくりはじめたのは、実は私どもなんです」と語るのは七代目社長の中村悟さん。「江戸時代も中期以降になると、庶民の住居である長屋にも畳が普及しました。ホウキモロコシを使った江戸ほうきは、畳に合っていて、長屋暮らしにぴったりの道具として広まりました。当たりが柔らかくてコシがあるので、力を入れなくてもササッと掃き出しやすいのが特徴です」
しかも100%天然素材の手づくりで環境負荷がかからず、電気代もいらないので現代生活にもぴったり。ホウキモロコシから出るあくで畳に艶が出てくるそうです。さらに絨毯は痛まないし、掃除機のように重くもないし、排気もなく埃を舞い上げにくい、若い人たちからも着目されていると中村さんは語ります。
現代生活に相応しいエコな実用品
「白木屋」は今、ほうきの品質を保つために廃業したホウキモロコシの農家から農地を借り、自家栽培に挑もうとしています。栽培から収穫まですべて手作業で行い、職人の手によってほうき草が選別され、細かく分類するそうです。このようにほうき職人をしっかり雇用し育成しているのは、「白木屋」の特徴でもあります。「良いほうきは5~7年くらい保ちます。良い草は癖がつきにくいし、ついても水を含ませれば元に戻ります。先端が不揃いになってきたら、ハサミでそろえれば綺麗に保てます」。ほうきは保存すべき伝統工芸ではなく、現代にマッチしたエコな道具なのです。
お話を伺った方
代表取締役中村 悟さん
■展示館インフォメーション | ||||
江戸ほうき展示館管理者:株式会社白木屋中村伝兵衛商店(平成23年度認定) | ||||
住所 | 東京都中央区京橋3-9-8 白伝ビル1F地図 | 開館日 | 月〜土曜日・祝日(年末年始等を除く) | |
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電話 | 03-3563-1771 | 開館時間 | 10:00〜19:00 | |
HP | https://www.edohouki.com/ | 最寄り駅 | 宝町駅A3番出口 徒歩1分 京橋駅2番出口 徒歩2分 |