戦災を生き延びた「箱四」の神輿
下町情緒を残しつつ、東京シティエアターミナルから海外へも直結するまち、日本橋箱崎町。そのターミナルからすぐ近くに『箱崎町箱四町会神輿庫』はあります。モダンな展示館に収蔵されているのは昭和11年に製作された大小の神輿。「箱四町会」とは昭和50年までの旧住所・日本橋箱崎四丁目のことで、昔ながらの町名を残したいという古くからの住民の心意気が反映されたものだそうです。収蔵されている神輿も戦災を逃れ避難させ、箱崎に残る唯一のものだそうです。
箱崎の神輿は名匠・浅子周慶の作で、欅の厚木を水の中に入れて枯らし、3年有余の歳月をかけてつくられました。当時は塗り神輿が全盛で、欅の総彫りは珍しい存在でした。厚い原木に深く彫り込まれた見事な龍が屋根まで入り、龍の眼には96個の十八金が嵌め込まれた豪華なつくりに圧倒されます。
島と島の縁で深川の氏子に
箱崎町は江戸時代初期に埋め立てられた小さな島でした。今では隣町と陸続きですが、昭和40年代までは北側を箱崎川、東側を隅田川、さらに西側を日本橋川に囲まれた島のような地帯でした。
また、隅田川対岸の富岡八幡宮を中心とした深川地区も、江戸湾に浮かぶ永代島という小島でした。江戸時代の箱崎と深川は砂州埋め立て地として共通の地域性があったことで、箱崎は深川の富岡八幡宮の氏子となったようです。
江戸三大祭とされる深川八幡祭は別名「水かけ祭」といわれます。沿道から清めの水がかけられると箱四の大神輿は水を浴び一層重厚さを増し、担ぎ手の「ワッショイ」のかけ声とともに浅子周慶の特徴である大きな鳳凰も大きく羽ばたくのだそうです。
町会事務所には祭の資料や古地図など
神輿は昭和60年に大改修し、その詳細な記録は展示館にも掲載されていますが、さらに長い保存のために、3年に一度の例大祭の後は神輿をすべて分解し、3ヵ月の陰干しを実施するそうです。箱四町会事務所には、神輿に掲げた駒札や半纏、祭の写真。そのほか地域の古地図、開発前の懐かしい風景写真などが見学(予約制)できます。
また、近くの高尾稲荷神社も立ち寄りたい隠れた名所です。江戸時代の傾城二代目高尾太夫の神霊(実物の頭蓋骨)が祭神として祭られている神社です。
お話を伺った方
町会長増渕 一孝さん
■展示館インフォメーション | ||||
箱崎町箱四町会神輿庫管理者:箱崎町箱四町会(平成23年度認定) | ||||
住所 | 東京都中央区日本橋箱崎町26-1地図 | 開館時間 | 8:00〜18:00 | |
---|---|---|---|---|
電話 | 03-5962-3137(平日 月~金曜日 9:00 12:00) | 最寄り駅 | 水天宮前駅2番出口 徒歩2分 | |
開館日 | 通年 |