皇室や梨園、茶道会から愛される上質で粋な帯締め
組紐は、色とりどりの絹糸を交互に組み上げてつくる日本の伝統工芸です。丸台や角台など、専用の組台を使い手で組み上げていきますが、糸と糸が交差し、幾重にも重なっていく色糸と柄の美しさは、日本が育んできた「組む文化」の賜物でしょう。この組紐づくりを学べるのが、日本橋富沢町の『江戸東京組紐 龍工房体験展示館』です。
龍工房は昭和38年の創業ですが、帯締めの生産として131年の歴史を持つ東京組紐の老舗です。皇室や梨園、茶道界などから支持される上質で格式の高い帯締めをつくり続けています。「良い帯締めには伸縮性があり緩みにくいのですが、そのためには、組台と真剣に向き合う職人の絶妙な力加減が必要でなんです」そう語るのは、龍工房二代目当主の福田隆さん。福田さんは卓越した技能者として厚生労働大臣が表彰する「現代の名工」、東京都優秀技能者(東京マイスター)に選出されている日本屈指の組紐職人です。
技術の探究と純国産の絹糸を使う、こだわりのものづくり
福田さんは、正倉院などの重要文化財の古代組紐を研究・復元に取り組んでいます。また、伝統工芸を次代に繋ぐための様々な企画やイベントにも参画し、組紐文化の伝承と普及にも寄与しています。近年、大ヒットしたアニメ映画「君の名は。」に組紐が登場し、国内外から注目されましたが、この組紐を忠実に再現し、商品化したのも福田さんでした。
龍工房では、純国産の絹糸にもこだわっています。そのため「群馬県の養蚕農家と提携して絹糸を仕入れているのです。生糸の作成、デザイン、草木染めによる染色、組みまでも手がける工房は、希少な存在です」と福田さんは組紐に対する気概を語ります。また「江戸の色使いは深みのある粋な色使い」といい、「和装の中で帯締めはあくまでも脇役で着物や帯を引き立てるもの。でも目立たないけれども存在感があるのが素敵な帯締め」それをさらりと着こなすのが粋なのだと教えてくれました。
伝統を進化させ組紐の領域を世界へ広げる
組紐の新しい可能性を探っているのは福田さんの子息で三代目の隆太さんです。隆太さんは「伝統は進化する」という信念のもと、次々に新機軸を打ち出しています。これまで存在しなかった中空二重構造の組み方を考案し、中空にペン軸を入れた「くみひもうるしペン」を世に送り出しました。他にも新技術を使用してカメラストラップ、ストール、ポーチなどを誕生させています。中でも組紐ブレスレットは、和の品格がありながら現代のファッションにマッチし、色柄も豊富なことから愛用者が広がっているといいます。
体験講習には初心者にも使いやすい小型の丸台が12台と、それを乗せる独特な形の置き台が用意されています。伝統工芸は継続するだけでも困難な時代に、龍工房のような活力溢れる「現場」で組紐を学べるのは、とても貴重な体験となることでしょう。工房には展示コーナーも設けられ、組紐に関連した資料や希少な帯締めなども見学できます。
(組紐体験の詳細は龍工房にお問い合わせください)
お話を伺った方
2代目当主福田 隆さん 3代目隆太さん
■展示館インフォメーション | ||||
江戸東京組紐 龍工房体験展示館管理者:株式会社龍工房(平成30年度認定) | ||||
住所 | 東京都中央区日本橋富沢町4-11地図 | 開館日 | 月〜金曜日(祝日・年末年始等を除く) ※要予約 |
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電話 | 03-3664-2031 | 開館時間 | 11:00〜16:00 | |
HP | https://ryukobo.jp/ | 最寄り駅 | 人形町駅A4番出口 徒歩2分 浜町駅A1番出口 徒歩7分 |