豊国、国芳、広重らの団扇絵
日本橋三越向かいの2つのコレド室町の間の道をまっすぐ進み、昭和通りを渡った左側が団扇と扇子の老舗「伊場仙」です。創業400年以上を誇る「伊場仙」は、創業当初は竹材や和紙を将軍家に納めていましたが、その素材を使って江戸後期に団扇を手掛けるようになりました。さらに初代・歌川豊国、歌川国芳、歌川広重など人気絵師の版元になり、浮世絵を団扇に刷り込んで販売し、人気を博しました。
月替わりで展示が替わる面白さ
店鋪右側、本社ビルの入り口からエレベーターホールまでの長いショーウィンドウが『伊場仙浮世絵ミュージアム』。「和」「伝統文化」「古典芸能」「江戸」などをテーマに毎月、月替わりで、浮世絵や現代作家の作品を紹介しています。展示館オープンの際はイラストレーター瀬谷昌男さんの「平成江戸百景」が開催されました。同氏の作品は広重・北斎・写楽など江戸を描いた名作に現代を描き加えたユニークな作品です。ほかにもユニークな個展やグループ展をいくつも開催してきました。
また、「伊場仙」が版元として出版した浮世絵コレクションや版木などの道具類、団扇絵の展示もしています。取材に伺ったときは、初代歌川豊国の団扇絵「今様十二ヶ月」シリーズのひとつ「弥生の図(陰暦三月)」をはじめ季節に合わせた艶やかな浮世絵が飾られていました。同時に同社に代々伝わる「お雛様」もずらりと展示されていて、その細やかなつくりが見事でした。
日本橋生まれの粋な小物
前述の瀬谷昌男さんの作品や浮世絵は「伊場仙」の店内にも掛けられているので、ぜひ立ち寄りましょう。もちろん商品の江戸団扇や江戸扇子の美しさは見逃せません。日本橋で生まれた江戸団扇は、持ち手や骨もすべて1本の竹を割いて作られています。大量生産するために考え抜かれた仕様で、その形状もわずかな力で風を起こしやすい横長の楕円形につくられています。江戸時代は、涼をとり、炊事や虫追い、また装いにも団扇はあしらわれていました。
江戸扇子は多色できらびやかな京扇子とは違い、絵柄がシンプルで「粋」を極めているのが特徴といいます。折幅が広く、骨の数も京都よりちょっと少なめです。扇子や団扇など小さな物にも江戸好みの表現やつくりを生み出した、江戸っ子の粋なこだわりを現代の装いに取り入れるのも素敵です。
お話を伺った方
代表取締役社長吉田 誠男さん
■展示館インフォメーション | ||||
伊場仙浮世絵ミュージアム管理者:株式会社伊場仙(平成23年度認定) | ||||
住所 | 東京都中央区日本橋小舟町4-1地図 | 開館日 | 年末年始・日曜日・祝日を除く毎日 | |
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電話 | 03-3664-9261 | 開館時間 | 8:00~20:00(店舗は月~金曜日/10:00~18:00<土曜日は17:00まで>/祝日・年末年始等を除く) | |
HP | https://www.ibasen.co.jp/pages/gallery | 最寄り駅 | 三越前駅A6番出口 徒歩6分 新日本橋駅5番出口 徒歩5分 |
※伊場仙まちかど展示館のギャラリーはスペース貸し出し可能です。作品展示ご希望の方はご連絡ください。