まちかど展示館 エリア特集

日本橋エリア特集 Part.2 先代から引き継いだものを令和の時代へ

江戸表具展示館

大経師(だいきょうじ)の称号は経新堂稲崎(きょうしんどういなざき)の誇り。
世襲の技術と独創性が粋な江戸表具を生み出す。

掛け軸、屏風、額装等の表装を行う経新堂稲崎は、天保年間から続く老舗。当初は大工町といわれた日本橋2丁目にあり、表具師筆頭格の「大経師」として名字帯刀を許されました。

近年は近くの荒汐部屋に見学に来る外国人が多く、その後に寄ってもらいたい場所のガイドマップやアプリを周辺の商店街と共に作っています。

明治17年に作られた江戸の表具師の番付表。東の大関に「稲嵜新八(しんぱち)」とあります。江戸だけでこれ以上いた表具師が、今も残る名は5〜6人に。

4代目の祖父・稲崎新八さん。稲崎の店主は代々新八を襲名していました。旧店舗は空襲で焼失し現在地へ移転。

5代目を継いだ父の棟史(むねちか)さんが「経師」と「新八」から「経新堂稲崎」という店名に。

四角い紙の画を団扇型に仕立てた5代目棟史さんの表装作品。「このさっぱりした感じが江戸の粋。書が中心だった京表具は金襴を全体に使う煌びやかなものが多いのですが、色のある浮世絵で発展した江戸表具はとても細く使うんです」と知伸さん。

古い画に修復やシミ抜きを施した後、新しく表装をした例。描かれた当時の美しさをよみがえらせ、表具でさらに引き立たせます。

戦後の焼け野原から拾って使い続けている焼き印。招き猫の後ろ姿は、初代の頃から経師の道具に押している家紋のようなものです。

表具に使う裂地(きれじ)の見本帳。このほかに経新堂稲崎には長年受け継いできた何百反という貴重な裂があり作品に合わせて選んでもらえます。

―東京2020オリンピックへ向けては?
前回の東京オリンピックでは日本が大きく変わりましたね。今回はより多くの外国の方がいらっしゃるので、浜町商店街連合会でもどう迎えればいいか検討しています。
―浜町の移り変わりは?
まず街が違います。マンションやホテルが多くできましたが、私が幼少の頃は明治座の周りは黒塀の料亭街で、学校帰りに芸者さんとすれ違ったりしました。江戸の昔は鼠小僧次郎吉(ねずみこぞうじろきち)が盗みに入ったという武家屋敷です。今のことに加えこういう歴史も伝えたいですね。
―経師の仕事とは?
表具を製作するだけでなく古い書画を修復して後世に伝える仕事でもあります。かつ後にまた修復できることが重要です。今は合成糊を使い機械で圧着する機械表具もあり、これだともう剥がすことはできないんですよ。江戸や明治時代のものに痛みが出る頃なので、家に伝わる作品をお持ちになるお客様も多いです。うちで手を入れれば百年残すことができますので。
―家業を継がれた理由は?
仕事場を通って育ちましたので必然的に(笑)。うちは表装中心にやっていましたが経師はふすまや障子も手掛けるため、私はトータルに内装を扱えるように建築設計を学び、いったん就職もしたんです。親父から100を受け継いだら120にしたいという想いがありましたね。

お話を伺った方稲崎 知伸さん

江戸表具展示館

管理者:経新堂稲崎(平成26年度認定)
東京都中央区日本橋浜町2-48-7
03-3666-6494
開館日:月〜土 (祝日・年末年始等を除く)
開館時間:9:00〜18:00
最寄り駅:浜町駅A2番出口 徒歩1分
HP:http://www.kyoushindo.com/
【年末年始の展示館および店舗の営業】
◎年内:12/28(土)18:00まで
◎年始:1/6(月)9:00より

TOP